◆ 向上心を掻き立てるもの ◆ 奥村幸治(NPO法人ベースボールスピリッツ理事長)
※『致知』2015年3月号特集「成功の要諦」P54 ───────────────────
一流の選手を目指す上で、素質があることにこしたことはないが、それがすべてではない。 おそらくイチロー選手には生まれながらの素質があったのだろうが、それ以上に彼にはいま自分にとって 何が一番必要なのかということを追い求める探究心と、
負けたくない、少しでも上を目指したいという強い気持ちがあった。 同時に、成功していく人というのは、多くの失敗を経験している人だともいえる。 イチロー選手は日米通算4,000本安打を達成した時の記者会見で次のように話している。 「4,000本のヒットを打つために8,000回以上は悔しい思いをしてきている。その苦しみと自分なりに 向き合ってきた。誇れるとしたらそこじゃないかと思います」と。
どれだけ失敗しようとも、その苦しみを乗り越えるたびに人の心は強くなっていく。 そしてその積み重ねが、より高い壁を乗り越えていく大きな力になっていくのだろう。 ではなぜイチロー選手はその苦しみを乗り越えることができたのだろうか。 そのヒントとなるのが、ある野球教室で少年野球の選手から受けた どうしたらそれだけたくさんのヒットを打てるのですか」という質問への答えの中にあるように思う。 イチロー選手は戸惑いながらも、 「大人になった私たちが、子供の頃のように野球がしたい、ヒットを打ちたい、少しでもうまくなりたいという思いをキープすることができたらっと向上し続けることができます」と答えている。 さらに彼はこうも言った。 「僕は他のメジャーリーガーの誰よりもヒットが打ちたい、うまくなりたいという気持ちを保ち続けることができると思います」と。 誰よりも野球が好きで、一分一秒でも長く野球をやっていたいと無邪気に語るイチロー選手の心の様相にこそ、彼が成功し続けているヒントが隠されているのではないかと私は思う。